うちに動物が来た
うちに犬が来た_エピローグ
さらに約1年後、2月末。
美緒の病気が治るかもしれないと言われ、今日美緒は大きな手術を受ける。
リスクが大きい為、死ぬかもしれないと告げられた。

美緒の手は、震えていた。



「美緒、これあげる」

「…?なぁにこれ」

「幸せを運ぶキジバトだよ、美緒の手術が無事に終わる様に」

「…ありがとうはすくん」



弱々しく笑顔を浮かべた美緒の両頬を包み込み、顔を近付ける。
昔の様に軽く触れるだけのキスを落として、彼女の涙を拭った。

幼馴染を置いて来てまで美緒が心配だった。
まぁ彼女には今日帰ってくる黒ネコのアイツが居るし大丈夫だろうけど。

ぎゅっとキジバトを握り締めた美緒は、看護婦さんに連れられた。




---




美緒が出発したのは朝、その後は俺も学校に行ってすぐ病院に来て今はもう夜だ。
まるで終わらない手術に冷や汗が流れた。
隣では俺に寄り掛かり眠るお姉ちゃんと、俯く父さんとハンカチを握り締める母さんが居た。

ぎゅっとキジバトを握り締めると、赤いランプの光が消えた。



「皆さん、手術は無事成功しました」

「お姉ちゃん起きて、手術が成功したって」

「美緒…?」



眠る美緒の頬を撫でるお姉ちゃん。
これでやっと、美緒は外に出れるんだ。

まだ暫くは療養生活だけど、いつか美緒とデートとか、してみたいな。






「はすくん見て、お姉ちゃん狐飼い始めたんだって」

「…美緒、今は俺とデートしてるんでしょ。俺を見て」

「はすくんのやきもち可愛い」

「……美緒の方が可愛いけど//」



こんな惚気話は、もう少し先の話。
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