新訳 源氏物語
恐らくは鮮やかな紅色に染まりきっているであろう頬の色を少しでも誤魔化す為に、両の手を両の頬に触れさせる。

放たれる熱が抜けきれないうちに、突然私の身体が後ろから柔らかに包み込まれた。

「ひゃうっ!?」

思わず素っ頓狂な声が私の口から零れ落ちる。

激しく左胸の奥底から溢れ出る律動が、帝に聞こえるのではと思われる程に激しさを増す。

私の耳に寄せられた帝の形の良い唇から、甘い囁きが落とされる。
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