情熱のメロディ
 「もちろん、簡単ではないけれど……公務が大変だとか、嫌だとか思ったことはないよ。王子に生まれた分、恵まれた生活をしているのだから、それ相応に働くのは当たり前だと思っている。王子という肩書きは、良くも悪くも……枷、みたいなものなのかな。でも――」

 そこで、言葉を切ったカイはじっとアリアを見つめてくる。

 ドキドキする気持ちとは別にとても苦しくなって、アリアは無意識に手をギュッと握っていた。カイの瞳も、音も、一体どうしてこんなにアリアを息苦しくさせるのだろう。

 カイは何に苦しんでいるのだろう――?

 「でも、さっき……アリアのドレスを選んでいたときは、楽しかった。お父様の気持ちがわかった気がする」

 お父様――現フラメ王国の王、ヴォルフ・ブレネンは、一般国民であったフローラを妃に迎えた国王だ。カイの口ぶりからすると、ヴォルフは妻のフローラによくドレスを作ってやるのだろう。

 ヴォルフに愛されるフローラ……そして、国王夫妻の仲睦まじい様子が垣間見れ、アリアの胸がキュッと締め付けられる。アリアには届かない夢が、彼らにとっての現実なのだ。

 「あの店は、お父様がお母様を初めて連れて行った場所なんだよ。そのときも、今も、お父様はいつもお母様にたくさんのドレスを送るんだ。それで、お母様は困り顔で『こんなに着られません』って……ふふっ、さっきのアリアみたいだった」
 「わ、たしも……楽しかった、です。カイ様にドレスを選んでいただいて……夢みたい」

 いつまでも続けばいいのに……と、そんな贅沢な気持ちが芽生えてしまう。
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