異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「あの……もしかして寝ぼけてらっしゃいます? それか目がお悪いとか」

「睡眠はしっかり取ってますし、目に問題はありませんよ」

「でも……あなたなら、その……もっと相応しいひとが。あ、あたしは……野猿ですし。粗野で粗忽で全然かわいくなくて……あなたのパートナーには」

「和さん」


セリス王子は静かに、それでいて確実に怒っていた。


「それ以上ご自身を貶めないでください。ひいては、あなたを選ぶわたくしへの侮辱にもなりますから。聞いていて不快になります」

「……すみません」


この、普段にこやかな人が怒った時の怖さは言い表せない。
背中に冷や汗が流れて、ただごめんなさいと謝るしかない。


「そんなに落ち込まないでください。わたくしも、あなたには楽しんでいただきたいのですから」


微妙な苦笑いをしたセリス王子は、あたしの手を自分の腕に掛けさせた。


「さあ、時間がありません。会場までは馬車で参りますから」


結局、セリス王子に強引にパートナーにされたけど。これがどんな事態を引き起こすのか、その時はわからなかった。


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