異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



カイルからルーン王国王子と名乗られても、従者を連れてないから本当かわからない。パーティーに招かれてるなら少なくとも貴族だとは思うけど。


そんな疑惑もあったし、彼の態度にちっとも品がない。むしろあたしのような庶民に近いから、ついついタメ口で話してしまう。


「さっきのプロポーズ、あたしは本気でないってわかってるからいいけど、真に受けるひとだっているでしょ。冗談にしても質が悪いし、これからは言わない方がいいよ」


カイルは腰にあるポーチから小さな袋を取り出すと、あたしに「手を出して」と言う。何かイタズラでもするのかな? と警戒しながら、好奇心に負けて左手を差し出してみた。


カイルは左手であたしの手を支えると、緑色の袋から出した銀色に光る何かをあたしの中指にはめて……って、え?


手のひらを裏返せば、中指に輝いてたのはシンプルな銀色の指輪。紫色の石がはめ込まれ、周りに繊細な細工が施されてる。

新品でなくかなりの年代を感じさせる品物だった。


初対面の見知らぬ他人から指輪を贈られて、受け取れるはずない。慌てて引き抜こうとしても、なぜかぴったりとはまってピクリとも動かない。


「ちょ、これ……外して! 何であたしにはめるの!?」

「無理だよ。それ、魔法が掛かったマジック・アイテムだから。俺が望まなきゃ外せないんだ」


カイルはいけしゃあしゃあと言うけど、あたしは彼をもう一度睨み付けて指を目の前に差し出した。


「いただく理由はありませんし、必要ありません。外してください! でなきゃグーパンチで殴ります」

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