異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



貴族連中が怯んだ隙に、ユズ自らあたしの手を引いて助けてくれた。さすがに一国の王太子妃へ無礼を働く勇気はないのか、皆黙って見てた。


連中を一瞥したユズは、すぐに興味をなくしたように視線を逸らした。


「残念ですわ。一国の中枢を担うという重要なお役目がありながら、親交のある……ましてや、今後同盟で大切なパートナーとなる国の、第一皇子殿下の婚約者のお顔すら忘れられるとは。そのような記憶力でしたら、頭はないも同然ですわね?」


なかなか辛味が効いた嫌味のユズの言葉に、連中の大半がさっと顔を青くした。


そういえば……とボソボソと何かを囁きあった後で、何人かにザッ! と膝を折って頭を下げられた。


「こ、これは失礼いたしました! バルド皇子殿下の婚約者様」


けど、頭を下げたのはあたしの周りにいる人だけで。アイカさんのそばを取り巻く連中はまだこちらを睨んでる。


「皇子殿下の婚約者? 言うに事欠いて、何を戯れ言を」

「まったく、あんな品性の欠片もない女が王族のはずないでしょう」


相変わらずあたしへ非難ごうごうだけど。アイカさんは止めて、とか細い声で訴えながら……指の隙間から見えた口元は――笑ってた。


そして。


なぜか、彼女の声があたしに聞こえてきた。


《男って、バカばっかり》


クスクスクス、とアイカさんは愉しげに笑ってた。


《みんな、みんなあたしの言いなり。なんて楽しいの! 王太子妃がなんだってのよ? 男はみんなアタシの言うことを聞くんだから。ティオンだってアタシの虜にしてやるんだから。後で吠え面かいて悔しがりなさい》


クスクスクス……。


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