異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




お腹の辺りで両手を組んだあたしは、思い切って顔を上げてバルドを見た。


「あたし……あたしは、恋人面するつもりもないから。婚約だって……取り消していい。一度だけでいい! それだけでもう……。後は……二度と会わないから」


勇気を振り絞ったのにだんだん勢いが消えていったのは、バルドが何も言わないからだ。彼は鋭い視線を向けたまま、眉ひとつ動かさない。


まるで、あたしに何の関心もないとでも言うように。


「……そんなの、やめろ! 自棄になるな」


ハルトに腕を掴まれたけど、あたしは「離して」と振りほどこうとした。


「自棄になんてなってない! 一生懸命に考えたもん。あたしができることなんて、巫女の力しかないじゃない。言ったでしょう、誰かの幸せのために生きたいって。だから、しょうがないじゃない!」


熱いものが、冷えた頬をつたっていった。


「ほんとうに欲しいものなんて、あたしは絶対に手に入らないんだから。せめて……これくらいいいでしょう!!」


バルドの心が手に入らないなら、せめて一度だけでも結ばれたい。それだけであたしは生きていける。


たったそれだけでよかったのに。


そんなささやかな望みすら、あたしは許されないの?

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