異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



バルドのキスに、翻弄される。

ささやかな抵抗なんて容易く封じ込められて、彼に触れられた場所が熱を持つ。


“おまえは、オレのものだ”


バルドがどんなつもりでそう告げてくれたのかはわからない。


もしかしたら、あたしの機嫌を取るためかもだけど……でも。


バルドだったら、そんなことはしない。


彼は不必要なお世辞を言ったり、媚びを売るような人じゃない。


もしもあたしが不要なら、きっぱり拒んでいたはず。


たぶん、だけど。


あたしが本心を話したから、彼も本音で応えてくれた。だからこその、あの宣言なわけで。


二度と離すつもりはないし、婚約を解消するつもりはない――彼は、そう言ってくれた。


夢、かもしれないなんて。そんなバカなことを考えてしまうのは、そうやってあたしに本心をぶつけてくる人がいなかったから。にわかには信じられなくて……。


あたしのそんな迷いを見抜いたのか、バルドは熱を孕んだ瞳のまま、あたしの耳元で囁いた。


「なにも迷うな……これが夢だと思えばいい」

「夢?」

「ああ」


バルドは軽く身体を起こすと、コツンと額同士を触れ合わせる。


「これから3日、おまえをオレのものにする」

「3日?」


意味がわからなくてぱちぱちと瞬きしていると、バルドは唇の端を上げて――笑った。


とてつもなく獰猛な、肉食獣のように。


背筋にひやりとしたものが走ったのは、気のせいだと思いたい。


「ただの夢だ……と思えばいい。オレの腕の中で」


その時のバルドの宣言がどんなものか……3日後猛烈に後悔する羽目になりましたよ。


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