異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




「……どうやら、“こっちだよ”とおっしゃってるようです」


セリスさんが教えてくれて、驚いた。


「セリスさん、言葉がわかるんですか? あたしはちんぷんかんぷんですけど」

「そうですか? わたくしもなんとなく……ですが」


そう会話している間にも、男の子はあたしの腕を掴んで引っ張る。結構子どもの力って強いのね、と思う。


「わ、わかった。わかったからそんなに引っ張らないで」


白いワンピースのような服を着た男の子に引っ張られ、洞から出る。霧が濃くなる中を歩いているうちに、夜なのに光が溢れる空間が見えてきた――あれは?


「うわぁ……」


見えてきたのは、とてつもなく高い場所から見下ろす景色。緑豊かな森や湖沼があって、時折不思議な生き物が飛び交ってた。


そして、男の子に導かれるように急斜面を抜けて山を降りていく。


高さに比べて信じられないくらい楽に麓まで降りることができた。


登山口の入り口らしき場所にやって来たところで男の子がいなくなってて、慌てて捜すと彼はあたしのお腹にしがみついてる。なにかをつぶやいてたけど、聞き取れなかった。


「ありがとう、あなたのお陰で助かったよ……」


頭を撫でると、子ども特有の体温の高さを感じる。照れたようにはにかんで笑った男の子。その顔に、なんだか懐かしさを感じた。


(なんだろう。初めて会った子なのに……なんか懐かしい)


不思議な気持ちになってると、手首が暖かくなってそちらを見れば緑色の腕輪がほんのりと輝いてる。ちょっと目を離しただけなのに、男の子がいつの間にかフッと消えていた。


「あれ……あの子どこに……」


セリスさんと2人で捜そうと足を踏み出した瞬間――バチン! と体が弾かれて森へと飛ばされる。


そんな最中で意識が急に遠のき、引っ張られるように落ちていくのを止めることはできなかった。



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