異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



レヤーのアドバイスに従って、ひとまず部屋から出ることにするけれど。わざわざドアから出て廊下を通る……なんて余計な労力と手間を掛けるつもりはない。窓があるならそこからレヤーに乗って脱出する。


けれど、どうやら窓は何らかの術でガチガチに封じ込められ、一切開かなくなっていた。だからレヤーの術で解除し、つつロゼッタさんの怪力でこじ開ける。


先に窓から出ていたレヤーと周囲の様子を見るため、窓から顔を出して気付いた。


……そういえばここ、五階だったんだ。サアッと頭から血の気が引く。


普段ならどうってことないんだけど、今はお腹に大切な命がある。少しでも無茶をしたら影響があるかもしれないと思うと、足がすくんでしまう。

あたし一人の体なら幾ら無理をしても、結局自分だけに返ってくるだで済むけど。赤ちゃんにその責任まで負わせられない。だから、臆病かもしれないけど、どうしても気後れしてしまう。


その迷いを感じ取ったのか、既に飛んでいたレヤーが励ましてくれた。


「大丈夫ですよ。衝撃を一切受けないよう緩和の術をかけてありますから」

「う……うん」


ここまで言われてもらったんだし、あまり時間がないのに迷ってる暇はない。窓枠に手を掛けてると、ドアの方から足音が聞こえてくる。しかも複数が。


「ナゴム、ちょっとがまんしてね」

「えっ……ひゃああっ!」


ロゼッタさんがあたしの体を抱き抱えると、そのまま窓枠を飛び越えて落ちて行く。柔らかい感触があってすぐ、レヤーが翼を猛然と羽ばたいた。


彼が飛び立った直後――


あたし達がいた部屋に爆発が起こり、木っ端微塵に吹き飛んだのが見えた。


< 761 / 877 >

この作品をシェア

pagetop