さよならさえ、嘘だというのなら

須田凪子

キラキラ光る黒い髪
柔らかく爽やかな笑顔を思い出す。

今日
話をしたばかり

お互い何も知らない

でも、その白い腕は俺の腰に回り、黄昏の街を2人で風を受け、互いに声を出し笑って……俺は……。

「自分でもわからない」

正直に七瀬に言う。
長年の付き合いだから、きっと彼女は俺の顔を見て、ウソは付いてないとわかっただろう。

「あの子は危険だと思う」

「危険って?」

「わかんないけど……」

「お前そればっかり」

「理由はないけど、あの子は危険だと思う」

七瀬の感は昔から当たる。

「あの子に近寄らないでほしい」

「別に近寄ってないし」

「私達とは違う」

「そりゃぁ田舎と都会は……」

「そんなんじゃなくて」

「怒らないから言ってみろよ」

「自分でもわからない」

一言一句俺と同じセリフを言うので、それ以上突っ込めなかった。

「颯大があの子に巻き込まれてしまいそうで……怖い」

「巻き込まれるって?」

「心配なんだよ」

「何もないって!」
ついまた大きな声を出すと、七瀬は涙を止めて「わかった」って返事をする。

こんな大きな声を出すなんて
やっぱり変だ俺。

「ごめんね。帰る」

七瀬は静かにそう言って
俺に背を向け

そのまま振り返らずに

出て行ってしまった。



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