さよならさえ、嘘だというのなら


学校へ行くと

丁度凪子がいて
生徒玄関で立ちすくんでいた。

「おはよう」

さりげなく声をかけると

「おはよう」って返事をする。

今日も長袖のブラウスを着て
困った顔で笑い俺を見る。

笑ってるじゃん。
調子いいの?

その笑顔を見て
昨日のメールの返事を無視されたのも忘れる俺。

やっぱ男子って単純……声が聞こえそう。

「どうしたの?」
ずっと立ってる凪子に言うと

「上靴がないの」
サラッと答える。

上靴がない?

意味不明な感じ。
はぁ?

「大丈夫。前の学校じゃ机のない日もあったから」

「え?」

「雨でずぶ濡れの校庭に捨てられていて、頑張って運んだの」

「は?」

「エレベーター無しで、三階まで運んだんだよ凄いでしょ」

「いやそれって」

その自慢は違う気がするぞ。
学校でいじめ?
上靴隠された?

今の今まで
そんな事件はこの田舎でなかったんだけど

あぁ?
呆然としていると

「西久保君おはよう」
須田海斗が小走りでスリッパ持ってやってきた。

「これで我慢して。今日買ってくる」
須田海斗は膝を下ろし
凪子にスリッパを履かせる。

「休み時間ごとに行くから」
須田海斗は凪子に言い
凪子は返事もしないで先にスリッパを履いて歩き出す。

「前にもあったの?」

須田海斗に聞くと

「慣れたもんさ」苦笑いで答えてくれた。


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