さよならさえ、嘘だというのなら

いつもと同じ夜なのに
空気が濁り不吉な夜だ。

小さな田舎町の平和な夜が崩れ
あちこちで大人の影が動く

消防とかも出て来る?
万が一という可能性もあるから
山狩りになるかもしれない。

山に捜索隊が入るのは久し振りだ

もう自殺の名所になってるから
余所の街から死にに来ても
うちの町の警察や消防は動かない

キリがないから。

行方不明になった家族の人は
だいたい民間の捜索隊に依頼する。

うちの町は動かないけど
もし
松本結衣がドロン山に入ったのなら話は別だ。

松本結衣は
この町の人間だから
全力で町は動くだろう。

大人達の動きを見ながら
俺は学校へと向かう。

どうして学校なのか
自分でもわからないけど

うん

わからない。
俺は魔術師でも占い師でもないけれど、うちの昔々の母方の先祖がそうだったらしい。

その血が
何代目かの血に蘇り
俺の元に流れている話だ。

昔から

変な勘は当たる。

それも
不吉な予感ばかりだけど的中している。


今回は

当たらないで欲しかった


松本

絶対無事でいろよ。
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