結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
タブーに触れるとき
ユウは区役所でもらった婚姻届の用紙を眺めながら、ぼんやりと考えていた。

ユウにとっては実物を見るのもさわるのも初めてだった婚姻届だが、レナはかつて須藤と婚約していた時に、婚姻届に署名したのだろうか?

ユウと再会する前のこととは言え、レナはどんな思いで須藤と婚約したのだろう?

(今更過ぎて聞けないけど…気になる…。)

考えてみたら、今更過ぎて聞けないようなことは、たくさんあるような気がした。

あの時レナはどう思っていたのか、とか…。

そしてユウは、離れていた10年間のレナのことを、何も知らない。

逆に、レナにとっても、今更過ぎて聞けないようなことがあるのではないか?

(今更なんだけどさぁ…とか言ってさりげなく話してみるか?いや、でも…。)

そんな話をしても、二人の関係は今と変わらずにいられるのだろうか?

自分の知らないレナを知るのは、正直言って、少し怖い気もするし、知りたい気もする。

逆に、レナの知らない自分を知っても、レナは嫌わずにいてくれるだろうか?

(ああ…オレ、気が小せぇ…。)

知らなければ一生知らないで済むことかも知れない。

でも、知りたい。

(こういうのパンドラの箱って言うんだっけ?オレにとってはタブーのような気もする…。)

ユウは婚姻届の用紙を、クリスマスプレゼントを隠した引き出しに一緒にしまった。

(聞いてみるか…。でもどうやって?)

ユウは答えのない迷路をさまようように、ぐるぐると思いを巡らせた。


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