結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
クリスマスプレゼントと一緒にしまっていた婚姻届を、ユウは緊張の面持ちでテーブルの上に置いた。

「レナ、これ…。」

「あ…。」

二人は無言で、じっと婚姻届を見つめている。

しばらくの沈黙の後、ユウが呟いた。

「書こうか…。今日はクリスマスだし…。」

「クリスマス、関係あるの?」

「いや…。特にないけど、毎年クリスマスが来る度に思い出すかなって。」

「かもね。」

レナはふふっと笑って、ユウの手を握る。

「神様の誕生日に、嘘ついたりしないよね?」

「うん。しないよ。クリスマスじゃなくても、レナには嘘つかない。」

「嘘ついてもバレるから?」

「…それもある。」

ユウはペンケースの中からボールペンを取り出し、婚姻届の用紙を広げた。

「…じゃあ…書くよ?」

「うん。」

ユウは緊張で手が震えそうになりながら、ひとつ大きく息をついて、いつもより丁寧に自分の名前を書き込んだ。

(すっげー緊張する…。)

母の直子が再婚する時に、直子だけが片桐の戸籍から抜け、再婚相手の籍に入った。

その後ユウは、直子の夫となったその人との養子縁組をしなかったので、ユウの苗字が変わることはなかった。

(戸籍にオレだけ残されて、おふくろとも本当に親子じゃなくなったようで少し複雑だったけど…でも、そのおかげでオレは親父の苗字のままレナと結婚できるんだよな…。この婚姻届を出せば…レナも、オレと同じ片桐になるのか…。)

ユウはすべての記入を終えると、レナに用紙とペンを差し出した。

レナはいつもの整った文字で、ゆっくりと丁寧に記入している。

(レナ、何考えてるだろ…。)

ユウは真剣にペンを運ぶレナの顔を見つめた。

すべての記入を終えたレナが、顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。

「ここにハンコ押して、この婚姻届を出したら…私もユウと同じ、片桐さんになるんだね。」

「あ…。」

(レナ、オレと同じこと考えてる…!)

「片桐さんの奥さんになるんだよ?」

「うん…そうだね。なんか照れ臭いけど…。」

二人は顔を見合わせて笑うと、それぞれ丁寧に判子を押した。

「これでOK…っと。」

緊張から解放されてユウが大きく息をつくと、レナはニッコリ笑って席を立つ。

「それじゃ、お料理テーブルに並べるね。」

「手伝うよ。」

「ありがと。うちの旦那様は優しいね。」

少し照れながらそう言って笑うレナを見て、ユウは真っ赤になった。

(だ、旦那様って…!!ヤバイ…めちゃくちゃかわいい…!!)

思わずレナを後ろからギューッと抱きしめると、ユウは照れながら呟いた。

「愛してる…。世界一かわいい、オレの…奥さん。」




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