結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
レコーディングの合間に、ユウはアルバムに入れる予定のない曲を作っていた。

入院中から考えていた、レナへの曲だ。

今の自分が素直な気持ちを込めて曲を作ろうとすると、甘過ぎてどうにも照れ臭い。

(どうしよう…。オレ、レナのこと、好き過ぎる…。)

甘過ぎる歌詞が照れ臭くて、ユウは何度も何度も、違う言葉はないものかと考える。

(素直な気持ちを歌にするのって難しい…。)



その日レナは、リサのアトリエを訪れていた。

ユウとレナの結婚式のための衣装がもうすぐ完成するからと、リサに呼ばれたのだ。

「結婚式はいつにするの?」

「まだ決めてないけど…。小さい教会でもいいから、身内と極親しい人にだけ来てもらえたらなって。」

「披露宴とか…。」

「それはいい…。代わりに、親しい友人と、日頃お世話になってる人たちをよんで、パーティーみたいな物ができたらいいと思ってる。」

「なるほどね…。披露宴のお色直し用にと思って作った衣装、パーティーに使うといいわ。」

「うん…ありがと…。」

リサが想いを込めて作ってくれたドレスとタキシードは、想像以上に素敵だった。

(これを着て、私たち結婚式を挙げるんだ…。神様の前で、この人を一生愛して添い遂げますって、誓うんだ…。)

その日が来るのが待ち遠しいとレナは思った。



ドイツにいる直子から、ユウの元にメールが届いた。

退院後、無事に退院したことと、レナと結婚することにしたと言う内容の簡単なメールを送ったが、ユウはその後、特に変わったこともなかったので、直子に連絡をしていなかった。

(おふくろから?何だろう…?)

メールには、来週、夫と一緒に日本へ帰ると書いてあった。

(帰る…?こっちに遊びに来るってことかな?テオさんも一緒になんて珍しい…。)

直子の夫のテオには、ユウが日本へ戻る前に何度か会った。

ユウがドイツに行ったり、直子たちがロンドンのユウのところへ来たりした。

(二人で日本へ観光旅行とか…。いい機会だから、レナにも紹介しとこうかな…。一応、母親の夫だしな。)

ユウとテオは、片言の日本語を交え、ほとんど英語で会話をしていた。

直子とは普段はドイツ語で会話をするらしい。

(レナは英語話せるから、大丈夫だな。)


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