結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
レナより一足先に部屋に帰ったユウは、レナが仕事から帰るのを待っていた。

目立たないように車で通勤したものの、どこかで報道陣に問い詰められてはいないだろうか?

報道陣だけでなく、撮影の仕事に支障は出ていないだろうか?

(片時も離れずそばにいてやれたら、こんな心配しなくて済むのに…。)

ユウはレナの帰りを待ちながら、キッチンで夕食の準備を始めることにした。

いつもはレナが食事を作ってくれるのだが、今日はレナも何かと疲れているだろうと思い、冷蔵庫を開けて食材を探し、献立を考える。

(パスタでも作るかな…。)

高校生の頃、お互いに仕事で忙しい母親を持った二人は、よく一緒にキッチンに立ち、夕飯の支度をした。

料理は必然に迫られて身に付いたことだったが、レナと一緒に料理を作るのはとても楽しかった。

(ナポリタン、二人でよく作ったな。)

学校帰りに二人でスーパーへ寄って、夕飯の献立を考えたり、一緒に料理を作ったり。

今考えると、二人はあの頃も今と同じようなことをしていたなと思う。

あの頃は幼なじみとして一緒にいた二人が、今はお互いを想い合う恋人同士として一緒に暮らしている。

レナへの想いをずっと伝えられず長い間その想いを胸に秘めていたユウにとって、それはまるで奇跡のようにも思えた。


ユウは手際良くタマネギやピーマン、ベーコン、マッシュルームを切ると、パスタを茹で、フライパンを火にかけ切り分けた材料を炒めた。

一人でいた時には億劫だった食事の支度も、レナの喜ぶ顔を思い浮かべると楽しくなる。

(やっぱりオレ、レナには甘いのかも…。)


仕事から帰ったレナが、リビングのドアを開けて嬉しそうに笑う。

「いい匂い!!」

「おかえり。」

「ただいま。」

レナはキッチンに立つユウに後ろからギュッと抱きついて、フライパンの中を覗き込んだ。

「おいしそう!」

「もうできるよ。腹減っただろ?」

「うん!」

無邪気に笑うレナがかわいくて、ユウはレナの唇に軽くキスをする。

「おかえりのキス。」

「ふふっ。」


一緒に暮らし始めた頃はキスをするタイミングも掴めないほどレナに触れるのをためらっていたユウだったが、今ではなんの躊躇もなくレナを抱きしめ、キスをする。

レナからもユウに抱きつくほど、いつしか二人の関係は甘い恋人同士となった。

そんな些細な日常が、二人にはとても幸せに感じられた。

二人でいる時は、不安も吹き飛ぶほど自然に笑い合える。

思いの外、世間を騒がせた二人の熱愛も、そのうちなんとなく収まって、また穏やかな元の日常に戻るのだろうと、ユウは思っていた。


これから起こる二人の関係を脅かすできごとなど、その時の二人は予想さえしていなかった。

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