結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
「で、最近片桐とはどんな感じ?」

「どうって…普通だよ?」

「その普通が聞きたいの!」

マユは冷やかすように肘でレナの体をつつく。

「んー…。一緒に寝て、起きて、ご飯を食べて…この間は、ユウが晩御飯作って待っててくれた。」

「片桐ってそんなこともするの?」

「うん。ユウ、料理上手だよ。昔よく二人で料理したりもしたから、自然と身に付いたのかも。」

「へぇ…意外。」

「そう?」

「それで?他には?」

マユは恋バナに花を咲かせる女子高生のように、ウキウキした様子でレナの言葉を待つ。

「他にって…。」

「やっぱり片桐って、レナと二人っきりの時は甘いの?」

「甘い?」

「うん。超甘々な感じ?昔っから片桐って、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいレナにだけは甘かったもんね。」

「そうなの?」

「まさかの無自覚?!」

「私にとってのユウは、昔からいつもあんな感じだったよ。誰よりも優しくて頼りになって…温かくて…。でも、今は昔よりもっとそう思う。」

そう言って幸せそうに微笑むレナを見て、マユはやれやれとでも言いたげに肩をすくめる。

「恥ずかしくて聞いてらんないわね…。」

「マユが聞いたんでしょ…。」

レナが恥ずかしそうに頬を染めるのを見て、こんな恋する少女みたいな顔をするレナは、昔のレナからは考えられないとマユは思った。

「幸せなんだ。」

「うん…すごく、幸せ…。」

子供の頃から二人を知るマユにとって、二人が幸せならそれ以上のことはない、と思えた。

「結婚の話とか、したりする?」

マユの問い掛けにレナは静かに首を横に振る。

「そういう話は、まだ1度もしたことないけど…ずっと一緒にいようって、いつも言ってくれる。」

レナの言葉を聞いて、今度はマユが首を傾げる。

「それって、結婚とは違うのかな?」

「わかんないけど…。まだ付き合って半年だし…ユウとずっと一緒にいられたら、私はそれだけで幸せだよ。」

ストレートなレナの言葉に、マユはなんだか少しレナのことが羨ましく思えた。

「はぁ…。もう寝よ。聞いてるこっちが恥ずかしいわ。」

「えぇっ…。マユから聞いてきたのにヒドイ…!!」

「ハイハイ、わかったわかった。レナは片桐のことが好きで好きでしょうがないってことだけは、本当によく伝わったよ。」

マユは勢いよく布団を被ると、静かに目を閉じた。

「アンタたちは、ずっとそのままでいてね…。」

「ん…?うん…。」

小さく呟いたマユの言葉が、レナの胸に少し寂しげに響いた。


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