結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
翌日、ユウはバンドの練習が済んだ後、シンヤの部屋を訪れた。

「で、その後どう?」

「うん。また一緒に暮らすようになって、ちょっとした新婚気分だな。お互い、相変わらず仕事で忙しいけど、楽しんでるよ。」

「良かったじゃん。」

シンヤはコーヒーメーカーのデキャンタからカップにコーヒーを注ぐと、ユウに手渡した。

「で、どうかしたのか?」

「あぁ、うん…。」

ユウはコーヒーを一口飲んでから、照れ臭そうに話し出す。

「あのさ…実は…。」

「ああ、そう言えばユウ、レナちゃんと結婚するんだって?」

「えっ?!」

まさに今、口にしようとしていた言葉を、シンヤに先回りで言われてしまったユウは、動揺して声が裏返ってしまった。

「ユウ、声!!」

「あ…。先に言われて驚いて…。」

シンヤがおかしそうに笑う。

「マユから聞いたんだよ。この間、マユとレナちゃん二人で話してた時に、レナちゃんに聞いたってさ。ユウにプロポーズされた、って嬉しそうに笑ってたって。」

「そうなんだ…。」

ユウはちょっと照れ臭くなって頭をかく。

「思いきったんだな。」

「まぁ…。」

「ずっと結婚なんか考えられなかったのに、急にどういう心境の変化があったんだ?」

「周りの人から結婚のことをいろいろ言われる機会がやけに多くて…オレなりに考えてみたら、結婚するならレナしかいないし…やっぱり、この先もずっと一緒に生きて行きたいって。」

「生きて行きたいって思えたんだ。」

「うん…。オレの一生かけて、レナを守って…愛していこうって。」

「ユウの生きる意味のひとつは、レナちゃんだな。」

「そうかも。それも、かなりの割合で。」

「言うねぇ。」

二人は楽しげに笑ってコーヒーを飲んだ。


「ああそうだ。そのことでシンちゃんに聞きたいことがいろいろあってさ。」

「なんだ?」

「プロポーズはしたものの、具体的に何をすればいいのか…。まだ指輪も渡してないし、何も決めてないんだよね。」

「そうだなぁ…。まずは親に挨拶じゃね?」

「あっそうか。」

「入籍はいつするとか、二人でも親と一緒にでもいいから決めるだろ。式を挙げるなら、チャペルとか神前とか人前とか、いろいろあるじゃん?披露宴はするかしないか。するなら誰を招待して、席順だの余興のお願いだの…自分たちの衣装やら引き出物やら…決めることは山ほどあるな。それから…。」

「ちょっと待って…ついていけてない…。」

想像を遥かに超えたやることの多さに、ユウは目眩がしそうになる。

「いろいろめんどくさいだろ?」

「うん…。」


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