深淵の縁から
村の入り口には巨大な岩がそびえ立っていて、それはとても異様な形状をしていると書いてある。

見るものにより様々なものに見えるその岩を、周囲の村の人達は気味悪がっていたようだ。

妖岩(あやかしいわ)と呼ぶ者もあったと言う。

その岩に隠される様に村は存在していた。

村の由来も相まって、村には滅多なことでは人が来ることはなく、周囲から孤立していた。

村を出ていく人達は、自分達がその村の出身だと言うことは隠したそうだ。

『忌部家(いんべけ)』が村の権力者だったようで、忌部家のお屋敷を中心にして他の家々が点在していた。

N県の忌部家は、忌隠村の忌部家が本家にあたり、それ以外は皆分家なのだそうだ。

この書物からすると、忌隠村はN県に存在したと言うことになる。

N県の忌部家に尋ねれば、本家のあった忌隠村の場所も分かるだろう。

分家が本家を知らない何てことはあり得ないはずだから。

それを手掛かりに村を探し当てる魂胆なんだな、と思った。

そして、あの噂は随分と盛られて、話が大きくなったものなのだと可笑しくなった。




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