ガキ的愛情表現の結末【完】
「呼び出しなんて、人聞きの悪いこと言わないでくれたまえ。
 ボクみたいな優等生がそんなことされるわけないだろ。
 ボクは、先生のお手伝いをしに来ただけなのだよ――あ、転校生?」


哲也は彼の風体を見て取ると、


「なあ、サッカー部に入れよ」


有希同様、名前を聞くこともせず、彼の肩をつかんだ。


「あ、そ、そのつもりだけど……」



でも、こんな2人がいるならやめた方がいいかもしれない……。



彼の頭に、不安という文字が浮かんだ。



「そうか! オレ、東。テツって呼んでくれ」



東……テツ?

テツオ? テツヤ?

どうせなら、フルネーム言えっつーの。



彼は心の中で、ツッこんだ。



「でも、なんで今頃転校してきたん?」


転入時期は新学期初日というのが一般的ゆえ、哲也の疑問ももっともなことであった。


「あ、父親の仕事の都合で」

「わかる~。
 私も、お父さんの仕事の都合で6月に転校したんだよ。
 会社も少しは子供のこと考えてほしいよね」

「ああ……ハイ」

「ほんと、中途半端な時期だったから変に目立っちゃって、クラスのイジワルな男子にいじめられて、そりゃもう大変で」

「はあ? 誰がイジワルだよ」

「おとなしくてカワイイ転校生にボールぶつけようとするヤツ、イジワルじゃなかったら、なんなのよ」

「おとなしくてカワイイ? 誰が~?」



職員室で朝っぱらから堂々と始まった口ゲンカ。


初めて見る低レベルなやりとりに、彼は、ただただ呆然としていた。

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