初恋も二度目なら
「アメリカ行きの話が来たとき、ホントはおまえを連れて行きたいと思った。マジで。だがこの状態で一緒にいても、いつか別れるだろうと思った。だから俺は、一旦互いに離れてよかったと思ってる」
「それは私も思ってます。それがお互いにとってベストな道だったと・・・今でも思ってます」
「そうか。でも俺・・・アメリカ(あっち)に行ってた間、おまえのことが忘れられなかった」

と部長に言われた私は、部長の胸板あたりに顎を乗せて「え」と言った。

「確かに、別れたことはベストな選択だったと思うが、それでも消化不良的な別れ方をしたと俺は思ってたからな。髪の長い女や、背の高い女を見ると、ついおまえとダブって見える時があった。あぁ、でもこの女は小夜みたいなメガネかけてない、小夜みたいな真っ黒な髪じゃない、この女の笑顔は悪くないが、小夜ほどじゃない、とか思ったりな」
「ぶちょぅ・・・。だからあなたは・・・6年間、ずっと帰国しなかったの?」
「まあな。吹っ切るまで時間を要した。てか、実際はまだ吹っ切れてねえよ。気持ちの整理がつく程度にはなったと思うが」
「そぅ・・・」
「おまえはなぜ俺と別れてから、他の男とつき合おうとしなかったんだ?」
「いや、“しなかった”んじゃなくって・・・」

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