初恋も二度目なら
「マジでいいよ。俺より卜部ちゃんの方が残念だったんじゃないかなーと思ってさ」
「あ・・うん、まあ・・・。どうしても観たくなったら、DVD借りればいいし」
「そーだな。じゃー、金曜のリベンジじゃないけどさ、“イニシャル”か“マイ・ミステイク”観に行かないか」
「“マイ・ミステイク”がいい!」

『今後、川端の誘いには乗るな』

・・・乗ってない、もん・・・。

「私、フェリシティ・モーガン好きなの。だから“マイミス”観に行こうと思ってたのよぅ」

そう。だから、川端くんの誘いには乗ってませんよ、部長!

「んじゃ“マイミス”にしよ。今週の金曜は?」
「ごめん。私、その日は予定がもう入ってて・・・」
「あ、そう。じゃあ来週の金曜・・・は、卜部ちゃん、習い事が始まるんだったよな」
「そうなの。だから・・・」
「来週の土曜にしよっか」
「あ・・・・・・うん、いいよ。もちろん」

『川端程度の野郎からでも少し押されれば、流されてつき合い始めるに決まってる』

・・・そんなっ!私、流されてなんかない・・・もん!
ただ、そんなに何度も断るのは失礼だし、しかも一度はドタキャンまでしてしまったんだし。

部長、あなたのせいで!!

だから、仕事が休みの土曜日に川端くんと会うからって、流されてつき合い始めることになんか、絶対ならないんだから!

「よし!念のために番号交換しとこう」
「・・・え?あ。あぁそうだね、うん」

・・・そうよ。
川端くんの言うことはもっともじゃないの。
もし急に行けなくなったら・・・私じゃなくて、川端くんが、ですよ?
連絡取れる手段がないと、病気になっても現地へ行かなきゃいけなくなるじゃない?

『おまえはニブい』
いやそれは当たってますが・・・。

『おまえにその気がなくても、川端にはその気がある』
そんなことなーいっ!!

私は、心の中で繰り広げている葛藤的会話を断ち切るように、川端くんに微笑みかけると、「スマホ、取ってくるね」と言って、更衣室へ行った。

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