初恋も二度目なら
もしかして私、「コンタクトつけるの禁止令」でも出されたの!?
そんなことないっ!
だって、私はもう部長とつき合ってないんだし!
プライベートなことにまで命令出す権限なんて、いくら威張ってるこの人にもないことだし!

「えっと。部長は、6年経っても相変わらず、引き締まった体躯をしていらっしゃいますけど、アメリカにいた時も、今も、何か運動をされているんですか?」
「俺?朝ジョグ」
「あさ、じょぐ?」
「朝ジョギングしてる」
「あぁ・・・そういう風に言うんですねぇ」

私は一つ勉強になったという感じで、コクコクと頷いた。

「アメリカ(あっち)いた時は海岸沿いをよく走ってた。今は近所の公園を4・5周走るのが定番コースだ」
「あ・・じゃあ部長も、帰国後に引っ越しされたんですね」

前、部長が住んでいた近所には、公園がなかったはず。
でも・・・実は私、長峰さんとおつき合いをしていた1年2ヶ月の間、一度もこの人のおうちへ行ったことがないのよね。
いつも長峰さんがうちに来てくれてたから、私はこの人に言われるまま、合鍵を渡して・・・最後は返してくれた。

私は過去の思い出を締め出すように、両手をギュッと握りしめると、わざと明るい声で「ジョギングだったら、雨降るとできませんよ」と言った。

「別に俺、毎朝走ってねえし。おまえも毎日ジム行ってないだろ?」
「あ。そうですね。最初は週に2日を厳守してましたけど、2年前からは、週一か10日に一度でもいいやって程度になってますね」
「な?」と部長が言ったとき、「200メートル先の角を右折してください」というカーナビの機械音が、車内に響いた。

一瞬シンとなった後、部長は「だから」と言いながら、車を右折させた。
ということは・・・もうすぐうちに着く。

「だから、今度うちに遊びに来いよ」

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