クリアスカイ
リビングに行くとテレビとエアコンをつけ、くわえ煙草のまま冷蔵庫から飲み物をとりだす。毎朝繰り返されてる習慣だ。
人の気配がないキッチンには当然のごとく朝食など用意されてる訳もなく、コップに注いだ牛乳を一気に飲み干した。
キッチンカウンターに無造作に放られた幾つかの郵便物は全て『宮川修二様』と彼宛てになっていた。紫煙に目を細めながらそれらの郵便物を手に取ると、一通り目を通してそのままゴミ箱へと投げ込む。ダイレクトメールや直接投函されたのであろう、訳のわからないチラシばかりだった。
キッチン越しに見えるテレビが7時半を告げる頃、再び寝室のドアを開けた。
ベッド脇の携帯を手にすると着信があった事を知らせるランプが点滅していた。履歴を確認し思わず顔をしかめる。
「めんどくさ…」
呟きながらも発信ボタンを押した。



3回ほどコールされた所で電話は繋がった。
「よぉ!修二?俺!起きてた〜?」
やたらと威勢のいい声が響く。
「起きてない。」
修二はそっけなく返事した。相手はそんな事お構いなしに笑う。
「うそつけ!てかさ、今からおまえんとこ行くから。」
「はぁ?何で?」
「いや、ほら今日は休みだろ。つーか、どうせお前は暇してんだろ?」
気遣いの欠片もない台詞を吐くと、「俺も珍しく朝から暇なんだよ。」と勝手な事情をつけ加えた。
「…俺もってなんだよ。こっちは暇じゃねーし。」
修二が溜め息まじりに言ったが、電話の相手は全くもってこのやりとりの温度差を気にしない素振りで、
「まあまあ、いいじゃん。とりあえず、そーゆー事で。」と修二の返事を待たず電話を切った。
「おいっ、アツシ…
いいかけたが既に携帯からは無機質な音しか聞こえない。
修二は舌打ちをして携帯を閉じた。折り返したところで無駄な事ぐらいわかっていたので、仕方なく床に散らばった服を拾いあげ、ランドリーボックスに乱暴につっこむ。
アツシの事だから、本当にすぐにやってくるだろう。修二は部屋をぐるりと見渡し、散乱しているテーブルに目を止めたが、「ま、いいや…」と片付けるのをやめたのだった。
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