セカンド☆ライフ

リンク

(いた!隣街の本屋の裏通り!待ってろ横峰!)

リンクを解除すると今までに感じたことのない激しい疲労感に襲われた。

(なんだこれ…肉体ねぇのになんでこんなに疲れんだ…意識が飛びそうだ…クソっ…)

気力を振り絞り隣街の本屋をイメージする。

(集中できねぇ…意識が拡散してく…)

セカンドには五感がない。
肉体がないのだから当然と言えば当然である。
見るもの、聞くもの、全てはイメージの産物だ。
なので、意識を一点に集中すると必然的に他が遮断される。
他を遮断することでファーストでは到底不可能な集中力を発揮できる。
そんなセカンドの集中力が乱れるということは、それだけリンクが危険な行為という証だろう。
意識の消滅はセカンドにとって死と同義なのだから。

(落ち着け俺…昨日の横峰の…悲しそうな笑顔を思い出せ…友達にあんな顔させていいのか?否!断固否である!)

目を閉じ、心を落ち着かせる。

(いいぞ…集中力が戻ってきた…)

肉体のないセカンドにとって疲労感は一時的なものなのだろう。
程なくして平常心を取り戻せた。

(リンク切ってからけっこう時間食ったな…まだいてくれよ横峰…)

目を閉じ、隣街の本屋をイメージする。
駅前の喧騒が遠ざかり、だんだんと静かになっていく。
フッと何かに引っ張られるような感覚。
目を開けると、そこは隣街の本屋だった。

(この裏手の通りだな)

フヨフヨと漂いながら裏手に回りこむ。

(いた!)
『横峰!』

『水辺君!?』

『どうした!?何があった!?』

『いたの…あいつがぁ!!』

横峰から黒い濁り…ノイズが溢れ出す。

『落ち着け横峰!とにかく落ち着け!』

『落ち着いてられないよぉぉ!あいつがぁ!すぐそこにいるんだよぉぉぉ!?』

(ヤバい…横峰を認識できなくなってく)

黒い濁りに覆われて、だんだんと横峰が見えなくなってきている。

『聞け横峰!犯人を見つけても俺達にはどうすることもできない!干渉できないじゃねぇか!』

『関係ないよぉぉ!復讐しなきやぁぁ!』

(よくわかんねぇけど…自我が崩壊しかけてんのか?)
『復讐なんてできねぇんだよ!』

『すぅぅるぅぅのぉぉお!!』

(ダメだ…完全に自分を見失ってる…)
『純流さん…試しますよぉぉ!』

再び横峰とのリンクを試みる。

(うおっ!さっきより横峰の自我がつえぇ…!)

(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…)

(ちょっ…怖いよ横ちゃん!)

一瞬でも気を抜けば飲み込まれそうだ。
荒れ狂う黒いモヤの中、横峰を探す。

(よこみねぇぇぇ!どこだぁぁぁ!)

(…………て………)

(横峰!?)

(………す……て………ん…!)

横峰の気配を感じる。
目の前にいる。

(よぉぉぉこみねぇぇぇぇぇ!!)

目の前の淀みの奔流に右手を突っ込む。
意識が同調しているせいか、横峰に触れた気がした。

(そこかぁ!!)

横峰のうでを掴み、淀みの中から引きずり出すイメージを膨らませる。

(ヤッベ!逆にもってかれる!)

猛烈な力で引っ張られる。

(クッソ…横峰ぇぇ!後でおっぱいさわらせろよぉぉぉぉ!!)

全神経を右手とその先の横峰に集中する。

(助けて水辺君!)

(ぶっこ抜けおれぇぇぇぇぇぇ!!!)

全力で横峰を引きずり出す。
フッ……と目の前が白くなる。
意識が遠のく。

(横峰…)
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