セカンド☆ライフ

縁(えにし)

『オッサ〜ン!田井中のオッサ〜ン!!』

『なんだお前か、なんか甩か?』

『オッサンの息子さん紹介してくんない?』

『息子を?なんで?』

『ちょっと気になることがあってさ、息子さんの力借りたいんだ』

『気になることだぁ?危ねぇことじゃねぇだろうな?』

『いやぜんぜん』

『言っとくが俺の息子はまだあどけない中学生だ、ちっとでも危ねぇ要素があんならお断りだぞ?』

『大丈夫だって、ある人に俺の言葉を伝えてほしいだけだよ』

『ある人?まさかファーストか?』

『うん、家族にね』

『ん〜…死者と生者がコンタクトとってもロクなことにはならんぞ?下手をすればご遺族を傷つけることになりかねんしな』

『傷つける?なんで?』

『世の中の大半は霊だのなんだのは信じてねぇからな』

『あぁ、そっか』

『確実にお前の言葉だと信じさせる材料があるならともかく、だな』

『ん〜、ま、なんとかなるさ、とりあえず紹介するだけしてよ、個人的に話してみたいってのもあるし』

『だったら明日にでもまた来な、一応息子にも聞いてみんとな』

『そだね、じゃぁ頼むよオッサン』

俺はオッサンと別れ、隣町の本屋裏へと移動した。

(あったあった、まだ残ってるな、しのちゃんのノイズ)

そこには詩乃から切り離された黒い靄が不気味に漂っていた。

(これこのままってのもヤバいよなぁ…どうすっかなぁ…)

『兄ちゃん!ソレに近寄ったらアカンで!』

『ん?』

『ほらほら離れぇ!飲まれんで!』

『えっと…どちら様?』

俺と同年代か少し年上くらいか?
それくらいの“見た目”の今時の若者風。
背は俺より低いが態度はデカい。

『自警団や自警団』

『自警団?』

『なんや知らんのか?兄ちゃん他所モンか?』

『はぁまぁ他所モンですね』

『ほぉか、まぁアレや、警察みたいなもんやな』

『遺族会みたいなもんかな?』

『あんな野蛮な連中と一緒にすな、俺らは平和主義やで?』

『野蛮…確かに…』

佐和田さんの顔が真っ先に浮かんだ。

『これな、なんか知らんけどちょっと前からここに浮いとんねん、誰やノイズなんぞ捨ててったアホは…仔猫ちゃうぞってなぁ?』

『あ〜…ハハハ…誰でしょうねぇ…』
(俺です)

『ほんま迷惑な話やで』

『これ、このまま置いとくんですか?』

『せやなぁ、除霊しようにも本体のホルダーがおらへんからなぁ』

『本体?ノイズだけを除霊することはできないんですか?』

『せやで、除霊っちゅうんはノイズやのうてホルダーの方を祓うもんやからな』

『そうだったのか…』

『ちゅうわけで放置!せいぜいこうやって人が近づかんように見張っとくくらいしかできひんわ』

『なんか申し訳ないっす…』

『なにがやねん』

『いや…ほら…えっと…うっかり近づいちゃったから?』

『あ〜、ま、無事で何より、やな』

ノリは軽いが、悪い人間ではなさそうだ。

『にしても謎やな』

『何がです?』

『野良ノイズなんぞ聞いたことないやろ?捨てノイズもな』

『そうなんですか?』

『ノイズはセカンドの中から生まれるもんやし、ノイズを宿したホルダーは絶対に助からんからなぁ』

『絶対…に?』

『せやで、生まれた時点でアウト、どんなに小さくても全身を侵食されとるからな』

『怖いっすねぇ』

『怖いでぇ、波風立たんように気楽に生きなアカンで?』

『ハハ…そうですね…』

『兄ちゃん名前は?』

『水辺です、水辺 唯里』

『唯里ね、俺は平泉 虎彦(ヒライズミ トラヒコ)、よろしゅう♪』

『よろしくお願いします』

『呼び捨てタメ口でええよ』

『はぁ』

『ところで唯里、自分今ヒマ?』

『まぁ暇と言えば暇かな?』

『ほんなら手伝ってくれへん?』

『何を?』

『この退屈な見張り任務を…』

『あぁ、寂しいのか』

『見も蓋もない…』

『まぁ少しくらいなら話し相手になるよ』

『マジか!助かるわぁ!』

結局夜の交代時間まで付き合わされた…
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