嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 陸斗くんはまだ小さいから、火傷をしないように気を付けないとね。

「陸斗くん、何色にする?」

「あおいろにするー」

「うん。じゃあ青いロウソクでやってみよう」

 陸斗くんの小さくて柔らかい手をそっと支えて、溶けたロウソクの滴を卵に落としていく。

 小さな子どもの手に触れる機会なんてほとんどないから、そのきめ細かい肌や驚くほど小さい指にオドオドしてしまう。

 その上、陸斗くんの動きは拙くてとても不安定なのに、ロウソクを使うなんて滅多にないことだから少々はしゃいでいる様子。

 次の動きが予測できないから、すごく怖い。陸斗くんより私の方がおっかなびっくりでドキドキしているみたい。

 でも、そんなドキドキを吹き飛ばしてしまうくらい陸斗くんは可愛い。キラキラ輝く大きな瞳で卵を見つめて真剣に模様を付ける陸斗くん、すごく可愛い。

 花ちゃんが羨ましいな……。こんなに可愛い子どもがいるなんて。

 私……、このまま子どもができなかったらどうしよう……。

 世の中にはそんなつもりがなくても子どもができちゃったなんてよくある話だと思ってた。……どうして私にはできないのかな。

 欲しいと思えば思うほど、焦りにも似た感覚に襲われる。

 子どもが欲しくない、なんて思っていた自分を今さら激しく後悔する。もっと早く子どもを作ろうとしていたら、できていたのかも……なんて思ったりして。

「つぎはね、きいろー」

「うん。はい、黄色」

 そうやっていろんな色のロウソクをポタポタと卵に落としたら、マーブルチョコみたいに綺麗な模様になった。なかなか可愛く出来上がったんじゃない?

 陸斗くんはたくさん作ったマーブル模様の卵を手に花ちゃんに駆け寄った。

 ああっ、そんなに走って、卵を潰さないだろうか。

「ママー!みてみてー!」

「ん?どれどれー?おーっ!いいじゃん!陸斗、上手だねえ」

「うん!」

 えへんっとドヤ顔をして見せる陸斗くん。やっぱり可愛い……。ママが大好きなんだね?

 花ちゃんが羨ましい。……恨めしい?これって嫉妬かな?

 可愛いと思いつつ、自然体で陸斗くんと接することができないでいる自分にさっきから薄々気が付いていた。

 羨ましいと思っても仕方ないのに……。

 どうして花ちゃんには子どもができたのに、私にはできないのかな、なんて。そんな嫉妬をする自分の心が汚いものに思えてきた。
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