嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 そうだろうなとは思ったけれど、花ちゃんはあの手のどんちゃん騒ぎは大好物で、家族全員で仮装して思いっきり参加してきたらしい。

 家族全員?

「あの阿久津課長も?」

「もちろん!阿久津なんか顔にペイントまでしちゃって大騒ぎだったよー。子どもが3人いるみたいで、もー大変!」

「……へえー?そう……」

 普段の冷たい阿久津課長のイメージとは全然違う。実は賑やかな人なのかな?家では自分らしくのびのびしてるのかも。

 それって、なんか素敵。家族の前では自分らしくいられるなんて。

 ……隼人さんはどうなのかな?私の前では自分らしくできてる?

 ちょっと不安になったりして……。

 でも、あの冷徹な隼人さんが夕べ猫みたいにゴロゴロと甘えるように絡みついてきたことを思い出したらちょっと赤くなって、うちはまあ大丈夫かな、なんて思った。

「とりあえず、イースターエッグもたくさん出来上がったことだし、今度は料理教室だねー」

「うん、またね」

 そう言って手を振ると、私は花ちゃんの家を後にした。

 楽しかったけど……心から楽しめなかった。今日の私、きっと変だっただろうな。

 普段はあんまり気にしない花ちゃんでさえ、「ん?」って感じだった。

 気の利くおませな彩花ちゃんに至っては「雪菜ちゃん、元気ないね?これあげる」なんて、折り紙のお花をくれる始末……。

 子どもに慰められるなんて。それとも子どもって敏感なのかな?

 花ちゃんが羨ましい。あんなに思いやりのある子どもがいて。

 どうして花ちゃんには子どもができたのに、私にはできないんだろう……?

 はぅー……。

 もう、なんか私の頭の中はこればっかり。ホント、ダメだな。自己嫌悪。
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