チョコレートなんか大嫌いっ
少し歩いたところに大型バイクが止まっていた。
『ほい』とヘルメットを渡される。
流れるような動作でキーを差し込みバイクにまたがる姿がワイルドでかっこよかった。
ぽーっと見つめていると

『なにしてんだよ、早く乗れよ』
『…ぁ、はいっ』

荒っぽく言われ慌ててヘルメットをかぶる。
乗り方が分からずまごまごしてしまったが、そこに足かけろとなんだかんだ優しく教えてくれる涼介さん。

『っし、行くぞ』
『は、はい』
『しっかり掴まってろよ』

涼介さんは最後に私の両腕を自分の腰元に持ってくるとバイクを走らせた。
この逞しい背中にまるで自分から抱き付いているようでそわそわと落ち着かない。
み、密着が多い…!

これだけくっついていると常に涼介さんの匂いが頭の中を支配する。
意外にも香水ではない本人の匂いだと思う。
ゴーゴーとものすごい風の中なのに決して消えることのない安心してドキドキする匂い。

『大丈夫かー?』
『は、はいっ』
『プッ、必死すぎ』
『…な…!』

笑われてしまった。
バイクに乗るのなんて初めてなんだから必死にもなるさ!
恥ずかしさを誤魔化すように続けた。

『ど、どこいくんですかー?』
『もうつく』

答えになってない答えで不満なはずなのにいつもより大きな声で人と会話しているのがなんだかおかしくて気持ちがいい。

周りの景色が見慣れた町並みから少しづつ変わって木々が多くなってきた。
都会にはない空気の中をバイクで走るのは新鮮で体の中がキラキラで満たされ心が洗われるようだった。

『ついたぞ』
『わぁ』

まるでおとぎ話に出てくるようなファンシーなコテージの前でバイクは止まっていた。

『お菓子の家みたい…!』
『ククッ』
『な、なんですか!』
『いや、思った通りのリアクションだったからな』
『……!』
『素直でいいって誉めてんだよ』

ポンと優しく大きな手が頭に軽く触れて通りすぎていった。
そのまま涼介さんは笑いながらコテージに入っていく。

『あ、待ってくださいよ!』

葵ちゃんとルポゼでお話ししてたときと全然違う。
この人と2人っきりでいるのは心臓がいくつあっても足りないよ。
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