二度目の恋の、始め方

act、2


それから数日後。雄大の姿はいつも通り屋上でみかけるけど、あの時みたいに視線が絡むことは一切無い。理玖だけが気付いたら手を振ってくれるだけ。
寂しいと、言ってしまえばそれまでだ。



「お~凛、来てくれたのか」

「寝てないと駄目だよ、お父さん」

都内の総合病院。県で一番大きな病院の三階角部屋。大部屋の奥の窓側のベッドで患者さん達を集めて麻雀大会なるものをしていた父は、私の姿を見て顔を綻ばせた。

「凛ちゃんからも言ってくれよ~晶(アキラ)ちゃんインチキばっかりするんだぜ」

「うるせーなぁ。自分の弱さを人のせいにする奴は馬に蹴られて死んじまえってな」

「お父さん!失礼だよ!」

「……す、すまん」

寝間着姿でベットに胡座をかくお父さんは、私の怒鳴り声に大きな身体を縮こませる。少し前まで鳶職の親方だった貫禄はどこへやら、周りの患者さん達に笑われているお父さんは昔から私にだけは弱かった。

「なぁ凛。ココの医者、やぶじゃねーの。医療費ぼったくられてんじゃねぇだろな?」

「何言ってるの。どこの病院行っても同じだったよ。肝臓が弱ってるんだもの」

「確かに痛むときはあるけどよ~」
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