触れない温もり
第1章:出会い
街を見渡す。


混んでいるとは言えないがそこそこ人通りの多い歩道。
子供連れの若い母親、わいわい楽しそうに騒いでいる高校生、ふらふらとさまよい歩くホームレス。

そんな人達は歩いている俺を見て少し距離を取る。


金髪にピアス5つ、さらに目つきの悪い、見るからにヤンキーな俺なんてみたら誰も近寄らないだろう。



「よし、あいつにするか」


今更そんな目線も気にせず、そう小さくつぶやいた俺、柏木羚(かしわぎ れい)は目の前から歩いてきている少しうつむき加減の少年を見た。


高校1年くらいだろうか……

あの制服は、かの有名なお嬢様、お坊ちゃまが通う有名私立高校だな……

薄い黒縁眼鏡をかけていて、伸びた黒髪もぼさぼさで、目もとまで隠れてしまっている。
お世辞にも活発で明るい子とは言えない。


しかし俺には好都合だ。


少しの期待感と罪悪感を感じながら少し歩くペースをあげて肩をぶつけようとした。

いわゆるカツアゲだ。

ひ弱そうで、対抗できそうもないやつならカツアゲもしやすい。


ぶつかるとき、ふと見えた横顔は、綺麗に整っていて色白で透き通るような綺麗な肌だった。


どんっ…



そう音が鳴ってぶつかる………はずだった。


はずだった……?


そう、ぶつからなかった。


それどころか、俺の肩は触れることさえなく空を切った。



「あ……れ……?」


突然の出来事につんのめった俺は何とか体制を持ち直し、『男子高校生、大コケ!!』という恥ずかしい自体はまぬがれた。



「てっか、あっぶねぇなあ!!よけんじゃあねぇぞおらぁ!」

恥ずかしさを紛らわせるように、そう叫び後ろを振り返った。


そこには、「怖い」「何この人www」という恐れや嘲笑う感情が入り交じっている群衆がいた。

その中の人組のカップルの声が聞こえた。


「ねぇねぇ、たっくん、あの人誰に言ってるのかなー?」


……誰に言ったのか分からなかったのか……?

まあ仕方ないだろう。

とりあえず、振り返り叫んだだけなのだから……

そしてもう一度後ろを見据える。


そこには俺を避ける人達と見慣れた光景だけが広がっていた。




「………って!逃げられたぁああ!?」
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