触れない温もり
第3章:夜から朝へ
あれ……?


ここは……?




俺は何故か学校の廊下に立っていた。



窓の外を見ると雪。




あれ………?


いま春だよな………?





窓にうっすら映っている自分を見る。



そこに映っていた俺は、黒髪、ピアスなし、レンズの厚いメガネ。




俺が嫌いだった俺。


陰鬱で根暗でイジメられ体質で。





………あ、俺、夢見てるのか……


いつの記憶だろう……





ふと前を見ると目に涙をためて何かを探しながら歩いている少年。


この高校から少し離れた中学の制服を着ている。





………あ。




あの時の……




俺がずっと会いたかった人。


話したくて、触れたくて………









俺の初恋の人。










ということは、高校受験の日か……



あの子は受験生だよな…



俺は受験生になんか配るために呼ばれてたんだっけ……





俺はあの日のように声をかける。



「どうかしたの?」



声は震えていないだろうか?

変なことは言っていないだろうか?




「あ……あのっ。トイレ行ってたら迷っちゃって……
はっ、早くしないと受験始まっちゃうっ」



声が震えていたのはその少年の方だった。



今にも泣きそうな声と顔に何故か「かわいい」なんて思ってしまう。




………そろそろ、俺も異常だな。




「少し戻って、渡り廊下を渡ったとこだよ。
向こうの校舎に行けばすぐに分かるから」



身振り手振りとやんわりした声で教えた。



「あっ、ありがとうございますっ!」


盛大に90度以上の角度まで頭を下げたかとおもうと、すぐに走り去っていく少年。



その後ろ姿に


「がんばれーっ!」


と声をかけた。




……あ!


夢だけど、あの時言えなかった言葉も伝えよう。


現実で言えたら良かったんだけどな。



自嘲ぎみに笑って、渡り廊下を渡ろうと角を曲がったその少年に









「好きだーーーっ!」









言い終わるやいなや体に強い衝撃を感じ、それと同時に景色や、俺の声で振り返った少年が消えていった。
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