クールな先輩の心を奪う方法
その日は、話しだけをして別れた。
…次の日、私は何時ものように、美雨に朝の挨拶をする。

「おはよ。今日も早いわね」
「おはよう、梓。少しでも早く仕事を始めないと、終わらないから」

そう言って苦笑いする美雨。
風邪をひいて以降、仕事を少しセーブするようになった美雨だけど、やっぱり、先輩達からの仕事が断れないみたいで、受けている所をよく目撃する。

「…どれ?…またこんなに頼まれたの?」
そう言って溜息をついた。
すると美雨は、ペロッと舌を出して、笑って見せた。

…こんな所が憎めない。
いつも笑って、大変なのにそんな顔一つしないで、仕事をこなす。

失敗が多いけど、それでも何度もやり直して、最後は最高の書類を提出している事は、知ってる。

「全くこの子は・・・ほら貸して。それ手伝うから」
「梓も仕事が」

こうやって私の心配もしてしまう。可愛い美雨。

「大丈夫よ、今日の仕事は大したことないし」
そう言って微笑めば。

「…ありがとう。本当に、梓は頼りになるよ」
そう言って満面の笑みを見せた。

恋敵、ライバル・・・本当なら嫌いで、憎んじゃう相手。
それでも、私は嫌いにもなれないし、憎みも出来ない。

美雨のこの笑顔は、疲れてる私を癒してしまうから。

「…アンタは、可愛すぎ」
「…へ?何か言った?」

「ううん、別に、何も言ってない」

私の顔を見つめ首を傾げるも、何でもないと言われ、美雨は自分の仕事に取り掛かった。
…私も仕事頑張るか。

そして、私も仕事を始める。
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