麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
白大理石の浴室で、丹念に体を清める。姫巫女として人前に立つからには、俗世の汚れを徹底的に洗い落とさねばならない。だからセレイアも毎朝覚悟を持って入浴にのぞむ。体を洗うのは召使の役目だが、洗われながら心の乱れを整え、俗世の汚れをはらうことに集中するのはセレイアの大事な役目だ。

それが終わると、今度は純白を下地に銀糸で雪の結晶の縫い取りがなされた美しい衣を身に着ける。

前身頃と後ろ見頃を肩でリボンにして結ぶ貫頭衣で、スカート部分は膝丈だ。ゆったりとした繊細なドレープを創り出しながら、腰帯を巻き、後ろで大きなリボンのように形作る。この腰帯の色は重要で、聖職者の身分を表す。セレイアは赤と銀。トリステアの国色たる赤、そしてこの国に恵みをもたらす雪の象徴たる銀。紛れもなくトップクラスの身分を表す色である。

未婚女性の正式な髪型―頭頂部で二本に分けて結ぶ髪型―に髪を整え、化粧を施し鏡の前に立つと、家でくつろいでいるときとはまるっきり印象の違う少女がそこにいた。

雪の中すんなりと立つ白き神木のごとく、すっきりと清廉潔白で、どこかきりっとしている。

その格好でディセルの部屋に向かうことを告げると召使たちに嫌な顔をされたが、構わない。今日は彼に用事があるのだ。

時刻は陽覚時(六時)になっていた。
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