麗雪神話～麗雪の夜の出会い～

白い光に包まれたその人は―神としか言いようのない美貌を持っていたのだ。

首筋に流れる白銀の髪はちょうど今夜の麗雪を映しこんだかのよう。

瞼は閉ざされているものの、その鼻梁といい眉といい、唇と言い、すべてが完全なる美を体現したかのような完璧さを感じさせる。

ひるがえる純白の衣のそでからのぞく手は、彫刻のごとくすっきりと滑らかそうで、銀の爪が月光を映して光った。

「雪の神スノーティアス様…！」

セレイアは慌ててその場に跪いた。

これほどの美しい方が、神でないはずがあろうか。

目を閉じ、手を組み合わせ、熱に浮かされたように、セレイアは一心に祈った。

「スノーティアス様、どうか、お願いします。
私の願いを、お聞き届けください。どうか―――――」

彼女の祈りは、「能力を取り戻したい」ではなかった。

自分でも何を祈ろうとしていたのか、極度の興奮状態にあったためにわからなかった。

民の幸福を願ったのだろうか。並々ならぬ愛国心を備えた彼女ならばありうる。

それとも―――

どさりと乾いた音がして、セレイアははっと目を開けた。

いつのまにか神木を包んでいた光も、天から差し込んできた光も消えてなくなっていた。

まるで夢でも見ていたかのようだ。

しかし夢ではなかった。その証拠が、目の前にあった。

天より降臨せし神のごとく美しい青年が、神木の根元に倒れていたのだ。

セレイアはそっと歩み寄り、青年の呼吸を確かめると、はたと我に返った。


「大変！　人だわ！　誰か！！」


廻りはじめる、運命の歯車。

姫巫女セレイアと、麗雪の夜、降臨せし神のごとく美しい青年。

二人の出会いは何を意味するのか…


それは神々すらも、知らない。