麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
それから二人は午前中いっぱいを調べものに打ち込んで過ごした。

ディセルの正体に関して、関係ありそうな情報もいくつか手に入った。

“精霊”。

時折人間の姿をして現れる、神の御使い。

彼らは自然界のものを自在に操る不思議な能力を持っているという。

トリステアにも、精霊らしき存在と出会ったという記録がいくつかあり、自在に水を湧き出させたとか、世界を闇夜に変えたとか、様々だ。ディセルの雪を操る能力も、そのような力の一種と考えるのが自然だという結論に至った。
ディセルの方はというと、途中から調べものに飽きたのか、席を立ってあれこれ本を手に取って見ていた。

その中で、疑問に思ったことがあったようで、セレイアのもとに駆け戻ってきたことがあった。

「セレイア」

「ん? どうかした?」

「 “恋”…って、なんだ?」

「恋??」

いったいどんな本を見ているんだと彼の手元を見やると、確かに有名な「恋愛小説」を抱きしめていた。

セレイアは苦笑しながらこう答えてあげた。

「ひとりの異性のことを大切に想って、その人のことを考えると嬉しくなったり、一緒にいるとどきどきしたり、離れるとすごく寂しかったりすることよ」

「……なるほど……それが“恋”…」

「もう、ディセル、まじめに勉強してよね」

そのあとディセルは妙に大人しく、何かを考え込むようにしていた。
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