麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「お兄さんの力は雪だけじゃないかも知れないぜ?
例えば…アレを実体化させることができたりしてな。
お兄さんだけの、新しい力さ」

「アレ…? それってどういう…」

その時突風が吹き荒れ、ディセルとセレイアは思わず目を閉じて腕で顔をかばった。

そして次に目を開けた時には、なんと吟遊詩人の男の姿はこつ然と消えていた。

荷物も、絨毯も。

まるで最初から何もなかったかのように。

しばし絶句していた二人は、互いに目を見合わせる。

「今のって、どういうことだ?」

「わからない…でもアイツ、確実にディセルの秘密を何か知っているみたいだった…敵か、味方か、わからないけれど…」

用心しなければならない、とセレイアは思った。

突然現れた、記憶喪失の青年ディセル。

彼がここにいることで、確実に、何かが、動き出している。

そんな予感がするのだった。
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