麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
夕刻、彼女を迎えに白銀の神殿まで行った。

仕事を終え出てきた彼女を見た時、たとえようもないほど嬉しい気持ちになった。

「セレイア! お帰り!」

「ディセル、まだ家じゃないわよ。
調べもの、どうだった?」

他愛ない会話を交わしながら、二人並んで歩きだす。

この空気が好きだった。

セレイアが笑ってくれるだけで、その声を聞くだけで、何もかもが満たされる気がする。

いや、その中に、無視できない衝動のようなものが混ざっている。

抱きしめたいと―思ったのだ。

なぜそんなことを思うのだろう。

―それって、変じゃないか?

さくさくと雪を踏みしめる屋敷への帰り道、不意にセレイアがつるりと足を滑らせバランスを崩した。

「きゃっ」

「セレイア!」

咄嗟にディセルは、彼女を抱きとめる。

柔らかな体の感触、腕にあたったさらりとした髪、ふわりと漂う花のようないい香り―

今セレイアは自分の腕の中にいる。

そう思った瞬間、すごくどきどきしている自分に気が付いた。

胸の鼓動がうるさいくらいだ。
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