麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
二人は休憩時間に神殿の中庭で待ち合わせをしていた。

現れたセレイアは、心配そうにこちらをうかがってくる。

「大丈夫? ディセル…私、すごく心配して…」

「―ごめん」

それがディセルの素直な心だった。

心優しい彼女に、いらぬ心配をかけたいわけではないのだ。

「セレイア、聞きたいことがあるんだ」

「私に答えられることなら、なんでも聞いて」

「ヴァルクス王太子殿下と…婚約、していると聞いたんだけど」

そこまで口にして、ディセルは聞きたくないと暴れる自分の心を感じた。

ヴァルクスの名前を聞いた今の、そのセレイアの優しい表情だけで、もう返事はわかっているような気がしたから…。

それでもぶつかってみたかった。

ディセルは意を決してその質問をした。
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