麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
屋敷は広かった。

しかし彼の記憶に比較対象がないために、その広さは漠然としたものとして感じられた。それでも少なくともたくさんの召使たちとすれ違ったから、それだけの規模の屋敷を持っているとなれば、少女セレイアの姫巫女という身分の高さが知れようものだった。

セレイアの案内で屋敷の外に出ると、彼はまぶしさに目を細めた。そして抜けるような青空の下、一面に広がる雪景色の美しさに、彼は驚嘆した。

「すごい、きれいだ…これが、雪」

「見たことないの?」

「……。多分、ある、と思うけど」

「ご、ごめんなさい。思いやりのないこと言っちゃって…」

セレイアが急にしゅんとなったので、彼は少し慌てた。

「そんなことないよ。気にしないで」

安心させるように唇の端を持ち上げて笑みをつくる。

するとセレイアは、今度は惚けたようにまじまじと彼を見つめてきた。

何かおかしいだろうかと思っていると、セレイアは我に返ったようだ。

ちょっと頬を染めて、そっぽを向きながら言った。

「一応、知らないと困るから、教えておくけど…あなたって、本当に、なんていうかその…綺麗な顔をしているわ。特にその銀の髪と…今、わかったけれど、瞳の色も銀色なのね、珍しいわ、とても綺麗」

「綺麗…?」

「こ、こっちよ」

セレイアは照れ隠しのようにずんずん先を歩いていく。

彼はその足跡を踏むようにして続き、しげしげと前を歩くセレイアをみつめた。

―綺麗、ということは、この国では困ることなのだろうか。それならばセレイアも困っているのではないかと思うのだが…。

それを(大真面目に)口に出そうか迷っていると、神木という樹が見えてきた。

純白の雪に溶け込むような、白い樹形の美しい大樹。
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