WHY
学校を出る際に、思い切って夢斗にベルをうった。




 「イマカラアエルカナ?」




 無理な様な気がしたが、それでも少しの期待を持って返信を待っていた。




 バスに乗って、後部座席に座ったとたんにベルが鳴った。

 


 「ドコニイケバイイノ?」

 


 バスから飛び降りすぐ、ベルを打ちたかったが走り出したばかりだ。




 駅に着くまで心待ちにして、耐えていた。




 このときほど、時間を経つのが遅いものはなく、本当に同じ時間なのかさえ

 疑ってしまうほどだった。




 程なくして、駅に着き、改札横の公衆電話の横にすぐ飛びついた。

 


 「ヨコハマエキ。イマカラムカウネ!」




 果たしてきてくれるか不安だったが、それでも自分は向かった。



 バスで行くと、電車は2つあって、横浜に行くものと、渋谷にいく電車と

 あり、大変便利な所にあったので、学校帰りはかなり楽しいものに

 なったのではと思うが、それでも自分は部活の為、まっすぐ帰る

 事が多く、エンジョイスクールライフは別のものとして捉えていた。




 ホームで電車を待つと、電車が入ってきた。




 風邪で前髪がかきられると、吸い込まそうになるので、ホームはいつも

 中央に立つことにした。

 


 いつ飛び込みたい衝動にかられるか分からなかったからだ。

 


 電車はラッシュ前だったので、比較的空いていた。




 座るとベルが鳴った。

  


 「ワカツタ。イマカラムカウ。」




 正直嬉しかった。

 


 電車に向う事が楽しくなり、少し浮かれモードに入った。




 何時も電車は恐怖だ。




 誰から見られているんじゃないかとか、他人の目を見られない。




 空間が好きではなかったので、何か一つこうも違うと助かった。




 電車内は大体30分の乗車となり、スムーズに横浜の駅に着いた。

 


 楽しい、嬉しいと久しぶりに心が躍った自分に少し照れていた。
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