手紙-あなたへ。-
現在-壱-
「ママ大丈夫??」

梢チャンが背中を摩りながら
声をかけてくれる。
その声ですら今は遠い
海鳴りのようにしか
聞こえていない。

またやってしまった。

こんなに飲んで吐いて
潰れて歩けなくなっても
迎えにきてくれる人は
もういない。

要(かなめ)はもういない。
いない人を思って私は
また今日も酒を飲んだ。
飲み過ぎていた。

自分の店を持ったのは
要に待っていてほしかった
そのためだった。

一番端のカウンター席で
少しずつ水割りを飲んで
目が会ったら
あの笑顔を見せてくれる。

自分の店を持って
ママになってたったの一度
要は店に来てくれた。

開店祝いのお酒を持って
夜なのに
サングラスかけて…
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