自分らしく

顔合わせ

 心地よい春の日差しに身体を伸ばす。
 もう朝だ。
 この建物にきて十年位は経つ私だが、朝会の気だるさだけはいつもそばにいた。
 とは言っても、朝会の話など私にとってしてみれば、三割聞いていたら立派なものだった。普段の私なんて、一割も聞いていないからである。
 つまり、ほとんど聞き流していたんだ。

「げーんさんっ!」

 天然パーマのセミロングなおっちゃん、源 玄武(みなもとの げんむ)。通称・源さん(げんさん)は、全てから見捨てられた私を拾ってくれた、神様みたいな人だった。
 私がいつも通り抱きつくと、源さんは

「おぉ、りぃか。いいか、今日の朝会は」

{特別取締役、特別監視官が来るため身を引き締めてとり}

「いつも通り怠けてていいってよ」

「ういー」

 と、ツッコミでも入りそうな感じで私と会話するのであった。でも今回は、いつも通り平和に終わりそうになかった。

{北の玄武!自由人シェイリー!前へ!}

 と、源さんと私に呼び出しがかかった。

「あ?」

 と、二人でハモったが、私はもちろん源さんもここから動こうとはしなかった。

{北の玄武!自由人シェイリー!前へ!}

{呼んでも来ねえーよ、あの二人は。もうそろ学習しろ}

 見慣れた、懐かしい顔がマイクを持って前にいた。

「…」

{来なくてもいい、ここで話す。…東の青龍!ここに着任致す!}
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