本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》

雑貨店を出てウィンドウショッピングを楽しんでいると恵のスマホが鳴った。
「ごめん！会社からみたいなんだ。ちょっとそこで待ってて」
私がうんと返事をする前に恵は私から少し離れた人気のいないところで難しい顔で話をしていた。
こういうことはよくある事で私はもう慣れっこだ。
私は目の前にあるベンチに座ると足をぶらぶらさせながら
ぼーっとしていた。
すると私の前に影ができた。
「あれー？……香坂？」
何となく聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには懐かしい人が立っていた。
「ああっ！辻先生？」
それは高校２年の時の担任でいろんな意味でお世話になった辻先生だった。
１０年ぶりに会う先生は相変わらずかっこ良くて男前だった。
「お前変わってないな～～すぐにわかったぞ」
相変わらず思った事をストレートに言うところは全く変わってない。
「先生、こういうときは嘘でも綺麗になったとか、大人の女になったと言うもんですよ」
口を尖らせる私に先生は、その言い方も変わってないと笑った。
「で？なんだ？今日は一人で何やってんだ?」
「そういう先生こそ・・・一人ですよね」
先生は口を尖らせながら一人じゃね―よと言うと斜め前を指さした。
指さした方を見ると授乳室ってプレートが見えた。
「え!先生結婚して赤ちゃんいるの？」
先生は照れながらうるせ～と言いながらも顔はうれしそうだ。
「そういうお前はどうなんだよ。ん？」
「私ですか?・・・・私は・・」
私は電話をしている恵を指さした。
それをみた先生は目を丸くして交互に私と恵を見た。