本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
「香坂」
担任の辻先生にに呼ばれた。
「なんでしょうか?」
「悪いけどこのノート職員室まで運んでくれないか?さすがの俺もこれだけあると持てなくて・・・」
申し訳なさそうに眉を下げるが、いっぺんに持っていこうとするから重いのでは?
「2回に分けて持っていけばいいじゃないですか…」
「手厳しいな…な?そんなこと言わないで頼むよ。香坂ちゃん」

男の人と普通に話ができるのは父と担任の辻先生ぐらいだった。
辻先生はなんか私の従兄弟に似ていて緊張せずに話せるのだ。
私は渋々返事をすると20冊はあるノートを抱えて辻先生よりかなり
後ろを歩いていた。

実はそれにも理由があるのだ。
辻先生って口は悪いけど人間味があって独身で人気がある。
ルックスも良い方だと思う。
少しタレ目で、右目の下に小さなホクロがあって、そこが女子ウケしてるのらしい。
もちろん、私は先生以上にしか思ってないけど、人気のある先生と必要以上に仲良くしてると
あることない事を陰で言われたりするのだ。
それが嫌で距離を取ってる。
時々、こんな全てにおいてビクビクしているような生活を送っていたら一生彼氏なんか出来ずに処女のまま一生を終えたりしちゃってって思ったりする。
17歳で人生諦めてるわけじゃないけど、人間そう簡単に性格が変わるわけじゃないから仕方がない。
そんな事を思いながら歩いていると前から小牧君が歩いて来た。
偶然目があってしまいなぜか咄嗟に目を逸らしてしまった。
いつもの自己防衛本能が働いた。
「香坂さん」
なぜか名前を呼ばれてしまった。
もしかして咄嗟に視線を逸らしたことで怒ったのかな?
私めを逸らしたまま顔を上げることができなかった。
「そのノート俺が持とうか?重そうだし・・・」
思いもしない言葉に顔を上げるとそこには誰にでもやさしい小牧君の笑顔があった。
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