本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
突きつけられた現実は当時17歳だった私にはあまりにも残酷なものだった。
神様は意地悪だ。
こんなに小牧君を好きにさせといて、オチがこれなんだもん。

お財布も携帯も定期もなしじゃ流石に帰れず、私は学校に戻った。
陽菜たちにカラオケをキャンセルするためメールをいれた。
そして乱れた机と椅子を綺麗に直し、小牧くんの席に座った。
そういえば小牧くんの席に自分が座るのは初めてだった。
まさかこれが最初で最後になるとは思ってもいなかった。
私は机に突っ伏し目を閉じた。
すると教室で小牧くんが私に笑顔でおはようって挨拶してくれたことを思い出す。
でも久しぶりに見た小牧くんの顔に笑顔はなかった。
城田さんと月うなら元カノの私が同じクラスにいることはきっと迷惑なんだろうな・・・・

ゆっくりと力なく立ち上がった。
自分の机の上に置いてあったバッグを持つと
私はその足で二人だけの秘密の場所であった音楽準備室へと向かった。

あんなに楽しかったのに・・・
たった今、二人だけの秘密の場所だったこの音楽準備室はもう秘密でもなんでもない場所になった。
どこで歯車がかみ合わなくなったんだろう・・・
いや、多分小牧くんは私みたいな女に飽きたのかもしれない。
今度は城田さんとの秘密の場所になるのだろう・・そう思ったら
目頭が熱くなって我慢していた涙がポロポロと頬を伝って落ちてきた。
「まだ・・・だいすき・・なんだけどな」
胸を締め付けられる様な思いに立っていられなくなった私はその場にしゃがみこんだ。
声を出さないように下唇を噛んで声を殺し制服のリボンを握りしめた。

その時、マナーモードになっていた携帯の振動する音が聞こえた。
バッグの横のポケットに入れてあった携帯を取り出した。
辻先生だった。
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