君と春を

甘く優しく




「なかないで……」


掠れる僅かな声が耳を震わす。


この声は………


「美月!!!」


手が震える。


うっすらと…でも確かに、俺を見ている美月。


彼女を抱き寄せたいのに、体が言うことを聞かない。


もどかしい……


「あれ?…フリーズ…してますよ?

起こしたくせに……放置…ですか?

……あなたの声が聞こえたんです。

だから戻ったんです。

…………責任重大…ですからね……」

彼女の瞳から溢れた涙がまくらを濡らす。


俺を呼ぶように震えながら差し出す手を頬に添わせる。


「………美月…!」


涙声で掠れてしまう彼女の名前。


「美月…っ!」


彼女の全てが愛しい。


全てを受け止めたい。


とめどなく溢れてしまった想いの導くまま、その身体に覆いかぶさるように抱き寄せた。

細い細い身体。

俺が廻した腕に応えるように僅かな力でしがみついてくれている彼女。


もう絶対、離さない。


どこにも、行かせない。


「美月、愛してるよ。」


囁くように耳元で伝える。

「………知ってます。

聞こえて……ました。

嬉しかった………

私も、あなたを……愛してるから。」



< 191 / 222 >

この作品をシェア

pagetop