ヒカリ

strange relations

ロビーはぴかぴか。
昼もそれからこんな夜中も。

チャーリーを抱きかかえて、エレベーターに乗り込んだ。
27階を押すと、静かに上昇し始まる。

いつも思うのだけど、このマンションは人の気配がしない。
たくさんの人がここで生活をしているはずなのに、ショウルームみたいな匂いがする。


「ただいま。」

帰ってきた時は、必ず言う。
おかえり、と言う人がいないことはわかっていても。

チャーリーの手足を拭いて、お風呂を沸かした。

1時間ほど、浸かって出てくると、リビングにコート姿のままの正人さんがいた。
時計の針は0時をさしている。

たった今、帰ってきたばかりの私の旦那さん。

「恵玲奈、ただいま。」

正人さんは、私を見ると目尻にしわを寄せて静かに微笑んだ。

コートを脱ぐと、ふわりと消毒液の匂いがする。

正人さんの匂い。


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