ヒカリ
部屋でチャーリーのブラッシングをしていたら、リビングの方で音がした。

リビングを覗いてみると、正人さんが帰ってきていた。
時刻は11時。
それでも早い方だ。最後に晩ごはんを一緒に食べたのがいつだったか、思い出せない。

「恵玲奈、ただいま。起きてたの?」

正人さんはコートを脱いで、それをダイニングチェアの背もたれにかけると、駆け寄ってきたチャーリーの頭を撫でた。

「うん。」

「早く寝ないとダメだよ。」

正人さんはネクタイを緩めながら、冷蔵庫からビールをだしてプシュッと片手であける。

「はぁい。おやすみなさい。」

戻ってきたチャーリーを抱き上げて、部屋に戻ろうとしたら、正人さんが私を呼び止めた。

「恵玲奈。」

「はい?」

「…いや。なかなか、早く帰れなくてごめん。」

正人さんはビールをテーブルに置いて、私を真っ直ぐに見た。

「ううん。大丈夫。気にしないで。」

本当に大丈夫。
正人さんの仕事が不規則で多忙なこと、知ってて結婚したんだもの。

それに。
結婚ってこんなものでしょう?

「おやすみ、恵玲奈。」

「おやすみなさい。」

正人さんに笑いかけてから、私は自分の部屋の扉を閉めた。

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